出会った患者さんたち

どうして、看護師?

看護師のみなさんや、看護師になりたいと思っている方は、看護の仕事のどんなところが好きですか?

「ナースの仕事は責任が重いし、その割りに格段にお給料がいい、というわけではないでしょ?夜勤もしなくちゃいけないし、土日の休みが無いこともあるし、こうして患者には文句を言われるし・・・どうして、ナースをしているの?」
昨日の夜勤のとき、患者さんにこう尋ねられました

You must be a caring person.

と言われて、そうなのかなぁ~?と首をかしげ・・・

仕事は好きだけれど、いつもワクワクして出かけていくわけじゃない
留守電に「スタッフィングから、キャンセルのメッセージが来ていないかなぁ?」なんて、不謹慎なことを考えつつトボトボ家を出る日もしょっちゅうある

こんな質問をしてきたのは、Mr. D.
火曜日に、バイパス術の手術をするため入院中
心カテで、冠動脈3つとも80~90%ふさがっている上に、不整脈も多発
そこで、CVICU管理となりました
夜中に準夜勤から引き継いだときには、夜10時ころ飲んだ睡眠剤のせいでグーグー高いびき
0時のアセスメントなどで、こっちだって仕方なく起しているのに、思いっきり不機嫌な態度
「次は4時近くまで、なるべく起こさないようにしますから」と言っても、ふてくされて「いつもそう言うけれど、採血とかなんとか言って、結局起こすでしょ?」だって
・・・確かにそうだ

案の定、2時ころ心電図が変化云々で、採血やら心電図やらアセスメントやらで起こすことになった
不機嫌な上に、こちらを試しているのか?とも思えるような質問をたくさんしてきた
「この心電図と、こっちの心電図(12誘導)は、どう違うの?何をみているの?」
「さっきの採血は何のため?どうして、最初に4リットルくらいまとめて採血してそれを使わないの?」
↑質問はまともなのですが、口調がひねくれています

奥さんがナースなのに、妙に医療に対して不信感いっぱいで、最初から「どうせ、お前たちは・・・」という態度
採血のときも、すばらしい血管だったのでおもいっきり針をさしたのに、血液が引けない←失敗?とアセるワタシにむかって、「昨日も、さんざん刺された」、「血管が見えていても、針が血管に入らず外側をすべるらしいんだよね」だって
知っているなら、先に言ってくれ
刺し方が違うじゃないか
なんとか、再度刺しなおしをせずに無事採血終了
ふぅ~っ、もう一度針を刺す、なんてお願いしたら、舌打ちか怒鳴られでもしたかも

ふと部屋を見渡すと、お見舞いのカードや子供の書いたような絵、ウサギの箱(イースターなので)が置いてあった
「昨日は、たくさんお見舞いが来たみたいですね?」と話しかけると、子供のこと、孫のこと、自分のことをいろいろと話し出した
そんな会話の中で、飛び出したさっきの質問
「なんで、ナースの仕事をしているの?」

その答えが知りたくて、このブログを書き始めた、というのが正直なところ
学生の実習を指導をしているのも、そのため
でも、決定的な答えはまだ見つかっていない

オーバーテーブルの上には、金色の星のシールが置いてあった
これも、お孫さんが持ってきたのですか?と聞くと、「これは、ボクが採血に成功したナースにあげる星なんだ」と言った(えらそうに、ふん、と鼻まで鳴らして)
じゃ、ワタシにもくれるのかなぁ、と思ったら、結局くれなかった
一回成功しただけじゃ、ダメですか~

それから朝まで寝かせてあげようと思ったのだけれど、採血の結果Kの値が低く5時半ころから不整脈も頻発してきたので、こっちもまたしょうがなく起こして、Kのサプリメントを飲んでもらった
そのときは、いつアメリカに来たのか?とか
日本では、どんな宗教が主流なのか?とか
若い日本人は、昔の日本人ほど親を尊敬しなくなったと聞いたけれど本当か?とか
なんか、世間話っぽいことをいろいろと聞かれた

「知りたい」というより、「しゃべっていたい」という印象
2:1のアサイメントでもう一人の患者さんはすっかり容態が安定してたので、おしゃべりにおつきあい
別に忙しくは無いけれど、この意味もないおしゃべりはいつまで続くのだろう?と思っていたら
15分くらいしたところで
Thank you for your company.
と言われた

もう、寝る、ということか

そう言えば、ナースになって2年目くらいのとき(日本の病院で)、5分おきにナースコールを押す患者さんがいて、スタッフ全員がヘトヘトになっていた
その時、病棟に来てくれたリエゾンナースが言っていたっけ
「患者さんは、必ず最後に『ありがとう』と言う・・・それまで、がんばって話を聞いてあげると、こちらを信頼してくれるようになる」と
用が(こっちの用事が)済んだか済まないかのうちに、足が病室の外に向かっていると、また呼ばれる、というのだ
・・・でも、忙しいし
だいたい、「あの」患者さんが『ありがとう』だなんて、考えられない!
というのが、その頃のスタッフの反応

あれから、ホントに「必ず」ありがとうと最後に言うのが人間なのか?と事あるごとに思い出しているけれど、今のところこれは本当みたいなんです
どんなに話が長引いても、がまんして(←ゴメンナサイ)話を聞いていると、必ず「ありがとう」と言われる
ま、ほとんどの場合どうしても忙しくて「ありがとう」の前に退室しちゃうんだけどネ
ひねくれMr. D も "Thank you." と言ったわけだし
部屋を出ようとすると、「あ、忘れていた、キミにもホシをあげるよ」と、名札に金星のシールを貼ってくれた

ありがとう、と感謝されるからナースをやっているわけではないのは確かだけれど(私の場合は)、
話を聞く、なんて単純なことで、患者さんが開胸術という大きな手術に臨む勇気が持てるのなら、また、そんな仕事がしたい、と思っちゃう
だから、ナースを続けているのかな
みなさんは、どうですか?

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早期離床

入退院が激しいから、同じ患者さんを3日続けて受け持つ、ということも少ない病棟
今週末の土日と月曜日で、3日連続受け持ちは、5人中3人だけでした

一人は、火曜日の心臓外科手術待ちのおばあちゃん、90才 ← 90才でも心臓の手術する時代
二人目は、消化管出血のおばあちゃん
結局今日(火曜日)には退院なので、計5日間の入院でした
三人目は、胸痛で入院してきた80歳のおばあちゃん

残り二人の患者さんもおばあちゃんで、オールおばあちゃんのお世話に追われた週末でした、アハハ

三人目の胸痛のおばあちゃん
この3日間ですごく元気になりましたよ~
というか、かなりスパルタ ← いえいえ、早期離床へのリハビリです
やっぱり、スパルタ・リハビリ…か

受け持った初日は、夜勤でも呼吸状態が安定していない状態で引き継いだtisane
部屋に行ってみると、意識はもうろう
手足をやっと動かせるだけで、当然2時間おきにナースが体位変換、食事介助(食べないけど)、フォーレ(尿の管)も入ったまま

か、と思いきや、夕方にはフォーレを抜いちゃいました(スパルタ、開始)
さて、どうなる?

二日目、スパルタの続き
カーディアック・チェアという、寝たきりの人でも座位が取れる椅子に強制的にのせる

それもこれも、呼吸状態が安定するのを確認してから…なんて悠長な話じゃなくて、呼吸状態を確認「しながら」、の同時進行
つなわたり、ですよ
結局夜間は、フォーレを抜いたあと尿が出なくて、朝一番でtisaneが導尿
朝まで、待つな!と夜勤に言いたい(ボヤき)

三日目、がんばるおばあちゃん
カーディアック・チェアに乗せたら、2時間くらいは座っていられたのでヨシヨシと思っていたら、疲れが出たのか、夜間にVT(心房粗動)を起こしていたらしい
80歳だもの、疲れるよ

月曜になって、さっさと退院させたい退院計画員に洗脳された医師が、tisaneのところにやってきた
「いつ、帰れるかなぁ?」

今日は、ムリでしょう(いくらなんでも)

「家に帰せるかな?」
おいっ! 3時間前にVT起こしたおばあちゃんを、家に帰すのか? おに

家に帰すなら、その前にPT(運動療法士)呼んでください、酸素の手配も必要です、センセ!

そんなやり取りを聞きつけた、退院計画員が私たちの会話に参加してきました
結局、今日PTをしてみて、退院は二日後くらい
家ではなくて、ナーシングホームに転院ということになりました

当たり前だ
恐るべし、アメリカの早期退院

あまりの大胆さにおののくtisaneでしたが、不可能な話じゃなかったんです
午後に、PTがやってきて、おばあちゃんをベッドに座らせてみました
座れた!

それなら、普通の椅子に座れる、ということで、椅子に座らせてみました
30分経ち、1時間経ち
おばあちゃんの心電図も呼吸も安定しています
ついでに、面会者も登場して、おばあちゃんの気を紛らわせてくれました

2時間くらい経ったところで、PTさんが戻ってくると、おばあちゃんが「トイレまで歩く」と言い出したのです
室内のトイレですが、歩行器とPTさんに抱えられるようにトイレまで歩いていったおばあちゃん
トイレから戻ると、さすがにヘトヘトでしたが、自信がついたのか、自慢話を…

入院する前は、車の運転もしていた、と
ウソでしょ~?

あながち、ウソでもないみたいです
たしかに「運転」していたのは、入院直前というよりもっと前のことのようですが、一人で暮らしていて、歩いてトイレにも行っていたし、杖も歩行器も使っていなかったようです
ただ、お掃除や食事の支度をする人は、お願いしていたようですが

自慢話をされたPTさんが、話に乗って、「どんな車に乗っていたの?」とおばあちゃんに質問
おばあちゃん、一言
「キャデラック」

きゃ、キャデラックですか…でかいっ
tisaneの半分くらいの背丈になっちゃった、やせたおばあちゃんが、
キャデラックを運転する姿を想像するのに苦しんでいるtisaneの横で、PTさんがおばあちゃんに次の質問
「ピンク色のキャデラック?」

あるわけない、ラスベガスじゃないんだ
PTさんは冗談で言ったのに、おばあちゃんは「趣味悪~い」というようにしかめツラをして、
「ベージュよ、ベージュ!」
と言って、だまりこくってしまいました

そんなことはゼンゼン気にせず、「ピンクだと思ったんだけど、アハハ~」と笑っているPTさん
この際、何色でも、いい
再び自慢のキャデラックを運転できるようになる、とは思えないけれど
これなら、おばあちゃんは水曜日には退院できそうです

早期離床
怖くて、なかなか進められないかも知れないけれど、
やっぱり離床の効果は、大きいです
あのままおばあちゃんを椅子に座らせなかったら、そのままベッドに本当に寝たきりになって、じょく創ができちゃったり、経管栄養になっちゃったり…

おばあちゃんの運命の分かれ道の月曜日、でした

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セルビアに帰る日

明日は、病棟のみんなにとって忘れられない日になりそう
火曜日朝9時
お迎えが来る
80歳の患者さんが故郷のセルビアに帰っていく日

ウチの病棟に来てから、何ヶ月になるだろう…
私が「半年くらいかな?」と言ったら、みんなに「もっとだよ~」と言われたから
それくらい長かった

ナーシングホームから来て、すでにトラキオが付いていた
意識もなく、目は開けるけど痛みへの反応は四肢ともになし
経管栄養も胃チューブから
尿道カテーテルに中心静脈ライン
いつ感染症を起こしても、おかしくない
いつ呼吸状態が悪化しても、おかしくない
そして、いつじょく創ができても、おかしくない
だれも、こんなに「もつ」とは思っていなかったのです
いつか感染症で高熱を出して、敗血症になるのでは、と…

でも、とうとうこの日を迎えました
毎日ナースが、痰を何回もサクションして
経管栄養を管理し
体位を変えて、エアマットレスとヒールプロテクターを付けて
ヒールプロテクターは、スポンジでできたブーツで、かかとの部分が持ち上がるようなデザインなので、かかとのじょく創を防ぐことができます
そして、仙骨部にはじょく創予防クリームを塗って…

助手さんは、毎日毎日大きな体の患者さんをきれいに拭いて、シーツを取り替えて…

呼吸器セラピストは、朝一番に痰をサクションして酸素の量や加湿を調節し、一日に何度も来てはトラキオのガーゼを取り替えて
夜も昼も…

ソーシャルワーカーは、家族が「国につれて帰りたい」と希望を出してから、手続きに追われていたのだと思う
ナーシングホームに退院できそうだ、という話が出たら、家族からのこの希望があtった
かれこれ、4ヶ月くらい前の話
向こうの受け入れ先を探して、病院から空港まで、飛行機、着いてからの移送手段
外国とのやりとりは、大変だったと思う

これもみんな、患者さんの奥さんの力なのです
毎日病院に来て、自分のウエストほどもある大きな両足をマッサージ
2時間かけて、ラベンダーオイルでマッサージします
そして、午後からは音楽をヘッドホンで聞かせ、めがねをかけて、5分ごとに声をかけて
お庭から取ってきたラベンダーを、ご主人の鼻先にかざして「いい匂いでしょ~」と
毎日、毎日
自分の親の看病でも、なかなかできないと思ったっけ
こうして、昼の間は5感(味覚はないから、4感?)を刺激して、夜はゆっくり休んでもらう
そんな生活のリズム管理を、奥さんが一生懸命にしていました

金曜日にチャージナースをしたときに、移送の日時が決定しました
管理師長の一人が、「それまで持たないと思うわ」と私に耳打ちした
でも、それには同意できなかった私
毎日ケアしている私たちから見ると、大丈夫なんじゃないかと思ったから
病院にいる間は、大丈夫
今なら、大丈夫
病院に一日でも長くいれば、その分感染症のリスクは高くなるから
状態が安定しているなら、移送は早い方がいいのです

飛行機は、セルビアまで何時間かかるのだろう?
Medical Airplane
看護師が同乗する
奥さんは、一足先に今日旅立った
セルビアでご主人の到着を待っている
Have a safe trip!

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イヤイヤ おじいちゃん

Night Shift(夜勤)からのreportで、「なんでもすぐ怒るから、気をつけてね」と忠告されていたおじいちゃん

レポートのあと朝一番に見に行くと、起きていたから
“Goooood morning! How are you?”
と声をかけたら、に~こり笑った

なぁんだ、大丈夫
と思ったのも、この一回だけで、あとはなんでも「いやいや」

体の向きを変えましょう、と言っても
Don’t touch me!

Breakfastを持っていっても
I don’t want to eat NOW!

肺の音を聞かせてください、とお願いしても
Get away from me!

朝のお薬を持ってきましたよ、と言っても
Don’t EVER touch me!

痛み止めをあげても、機嫌がなおらない
たいてい、朝食が出ればその間は穏やかになる←おなかが空いていただけ
「心臓の薬ですよ」と言うと、その薬だけは飲んでくれる←さすがに、「心臓」は大事だと分かっている

でも、このおじいちゃんだけは、なんでも「いやいや」のまま
体の向きを変えようとしたら、腕をぶんぶんふりまわして、そのうえ、ナースコールを投げつけようとした
こっちが、危ない
だから「気をつけて」って言っていたんだ~

昔、家にあった絵本で「いやいやえん」っていうのがあったっけ
しげるくんは、なんでも「いや」
あかいものは、いや
保育園にいくのも、いや

いやいや、ばかりなのでお母さんに「いやいやえん」に連れて行かれて
結局、もとの世界の方がいいってことに気づく、しげるくん

まるで、しげる状態のおじいちゃん
朝10時になってDischarge planner(退院調整係)が、このおじいちゃんは「11時半にナーシングホームに行くお迎えがくるから」と言ってきた
ナーシングホームは、日本なら長期療養型施設
そこに空きベッドが見つかったので、急性期病院から転院になる

11時半近くなって、ストレッチャーを押して、移送係りのお兄さんたちがやってきた
「新しい病院に行きますよ~、向こうで皆が待っていますよ~」
って言ったのに、おじいちゃんは
“NOooooo!” と叫んでいる

でも、ここにいてもお薬飲まないんでしょ?
“NO!”

ご飯も食べないんでしょ?
“NO!”

体の向きも変えたくないでしょ?
“ NO!”

それでも、ここに居たいの?
“Yes!”

今日はじめての、Yes、だ
おじいちゃんはベッド柵をがっしり両手でつかんで、Don’t ever touch me! Get away from me! No, No, No!!!
と大騒ぎしながらも、マッチョな男性4人に無理やり、柵をつかんだこぶしを開かされ、ストレッチャーに乗せられ、ベルトを締められ、連れて行かれちゃった…

いやいやえん
に行ったんだろうか?
ナーシングホームでは、リハビリしてくれるのに
もっとお世話してもらえるのに

今頃、どうしているかなぁ?

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家族って すごい

昨日も、超過勤務で4時間延長して働きました(←人手不足)
朝7時から夜7時までず~っと患者さんを看ていると、その患者さんの「一日」がよく見える
午前7時=朝起きる少し前から、午後7時=夜ご飯が終わるまで、起きている間のほとんどの活動を看ることになる

5人の受け持ちのうち、3人の患者さんの家族が面会に来ました
やっぱり、家族ってすごい
家族が来ると、患者さんってすっかり元気になっちゃう!

17号室の33歳の女性
痙攣発作で入院してきて、24時間EEGをつけている(頭中、コードだらけ)
頭痛がひどいので、昼間でも真っ暗な病室で静かに寝ている
TVも見ないし、本も読まない
頭痛が起こらないように目を閉じて頭を冷やしている
トイレにも起き上がれないので、用足しはベッドパン
それも、やっと やっと

午後3時過ぎに、妹さんが来た
すると、いままでぐったりしていた患者さんが、おしゃべりをしている
家の近くの大好きなカフェから、ディカフェを持ってきてくれた!と大喜びで私にも話しかけてくる
妹さんに、ベッドパンの後、臭い!とからかわれ、大笑いをしている!

そこで、調子に乗ったワタシ(この様子なら、活動レベル↑、かも?と)
お湯を持ってきたら、体を拭いてみる?と聞くと

がんばって起き上がりはじめた
ふらふらしながら、ベッドに腰掛けた
そして、自分で拭く、と言った

妹さんが手伝ってくれるから、がんばって体を拭くことができた
さっぱりと新しいガウンに着替え、新しいシーツにくるまって、気持ちがいい!と
やっぱり頭痛は起こっちゃったけど、悲壮な表情ではなかった

ありがとう、妹さん!

二人目の患者さんは、9号室の88歳のおばあちゃん
左足の手術をした
もう、とっくにリハビリをはじめて、SNF (Skilled Nursing Facility、スニフ)に転院しているころ

ところが!
すこ~し認知障害が入っちゃっているので、なんでもイヤイヤ
ご飯も、気が向いた時にしか食べない
トイレを促しても応じないし、気が向いた時にベッドの上で勝手に用を足しちゃう
用が済んでも、拭きたくない、とそのまま寝ている…

医師が足を見ようとすると、
Don’t EVER touch the leg!!
と怒鳴っちゃう

まして、PTさんがきてリハビリしようとするなら、モノを投げる、たたく、腕を振り回す、罵声を浴びせる…
手のつけようが無い

ワタシが薬を持っていっても、
Do you think you can trick any people?
とまったく信用してもらえない…

夕方6時ころ、娘さんが来た
お母さん、どうですか?と聞くと、
今は、好物のナスを持ってきたから機嫌よく食べているけど…と
そこへ、医師が来て
「お母さんの状態がこのよう(なんでもイヤイヤ)では、引き取るところがないですよ」と開口一番、がつんと言った
医師としても、なかなか退院させられないので、困っているというのがホンネ

ちょっと、むっとした
お母さんのイヤイヤは、娘さんのせいじゃない
娘さんだって、一生懸命やっている
リハビリもできないお母さんを家に引き取るわけにも行かないし、どこか転院先を探してほしいと思うのは、当たり前だ
娘さんは、シュン、と下を向いてしまった
それからしばらく、医師から「現実」の講義を受けてしまったのだ

でも、病室に戻ってくると
前より一生懸命お母さんに話しかけている
コーラが飲みたい?
ジュースは?
氷は入れるの?

もう、6時になっちゃったけど、
朝の9時に飲んでくれなかったお薬を、持って行ってみた
全部で12錠もあるから、抗不整脈や高血圧など大事な薬と、ビタミン類の薬と二つのカップに分けて
娘さんに、できればこちらのカップから、と大事な薬のカップを渡した
一粒でも飲んでくれれば、いい

すると、おばあちゃんは、全部飲んだ
すごい! のどがつまる、とか、私は耳が聞こえないし目が見えない、と言い訳していたのに
しかも
コレステロールの薬は緑色のはずだ、見当たらない、と
自分がいつも飲んでいる薬を思い出してくれた

娘さんが6時に来て、7時に帰るまでの1時間
たった1時間なのに、ご飯をいっぱい食べて、薬を飲んで、ベッドをきれいにして、体を拭くことができた

娘さんが帰りがけに
You have to listen to your nurses.
You need to walk with therapist.
You have to see your doctor.
と何度も言い聞かせると、わかった、としぶい顔で了解していた


3人目の患者さん
70歳の男性で、手も足も動かない
意識のレベルも低下していて、目を開けるが、何の目的も無くきょろきょろさせるだけ
声をかけても、反応しない
トラキオストミーで呼吸をしている

奥さんが毎日来る
ご主人にめがねをかけてあげて、ヘッドホンをして音楽を聞かせてあげる
午後には、大きな両足を1時間かけてマッサージ
お肌がつるつる、だ

昨日も、午後2時ころやってきた
いつものとおり、めがね、ヘッドホン、マッサージ

小柄な奥さんが、自分のウエストほどもある大きな足をマッサージしている
元気になったら、奥さんにお返しのマッサージしなくちゃねぇ?
とワタシが患者さんに向かって話しかける

すると、奥さんが、アハハ、と笑う
それから、ご主人が笑っているように見える、と言った
笑うわけがない
でも、そう見えるなら、それでいい

大変でしょう?毎日…と奥さんに話しかけると
「元気なころ、いつも私の肩をマッサージしてくれたから、私がお返しをしているのよ」
という答えが返ってきた

夫婦って、すごい
こうして二人で生きていくんだ
奥さんの愛情が、今はこの患者さんの命を支えている

私たち医療従事者にできることって、限られているんだなぁ、と痛感の12時間勤務で

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傾聴の効果

「けいちょう」って、看護特有の言葉、と聞いたことがある
そうなのかな

相手の話によく耳を傾けて話を聞くこと

聞きもらすまいとして熱心に聞くこと。Shin Meikai Kokugo Dictionary, 5th edition (C) Sanseido Co., Ltd. 1972,1974,1981,1989,1997
listen attentively
日本では、学生のころよく教えられました
アメリカでは…critical thinkingの陰に隠れて、あまり強調されていないような印象
忙しさにまぎれて、つい忘れてしまう「話をよく聞く」行為

受け持った88歳の痴呆のあるおばあちゃん
家に帰って面倒をみるのは、娘さんだけ
娘さんは毎日病院に来て、お母さんがちゃんとご飯を食べるか、お手洗いに行けるか、付き添っていた
でも、毎日医師に「退院は延ばしてほしい」とお願いしている
アメリカの病院ではもう入院させてもらえないくらい、88歳のおばあちゃんは回復している
(と言っても、酸素をつけて歩行器を使って、トイレに行くくらいの距離は歩けるようになった…というのが、退院の目安ですが)
酸素は家に届いたし、歩行器もある
だから、退院してください
というのだ

娘さんの話によると、トイレは2階
おばあちゃんがすごすリビングルームは1階
階段が25段もある
カモード(ポータブルトイレ)をおけばいいじゃない、というdischarge planner
確かに、そう
でも、お風呂はどうするの?
お散歩するにも、外から玄関までは15段の階段がある
娘さんは、せめてお母さんの体力がもう少し回復して、手がかからなくなるまで見てほしい
と思っているのだ

一日でも早くベッドを空けたい医師 VS 退院を延ばす家族
すっかりこんな構図ができてしまった

そんなときに受け持ちになった、ワタシ
まあ、本来なら「一日でも早くベッドを空けたい医師」側について娘さんを説得するんだろうけど、なんかそんな気にもなれなかった
そしたら、強気の娘さんがガンガンしゃべりだした
どうしてももう一日、おかあさんを見ていてほしい、云々

理由を聞くと
ご主人が、おとといの夜脳梗塞で倒れた
症状は軽かったから昨日家に帰ってきたけど、お母さんの部屋を整えるのにもう一日欲しい
というものだ
20分くらい話を聞いた
ちと、長かった…が耐えて聞いた

「事情(ご主人のこと)」もあるし、ソーシャルワーカーやDischarge Plannerに話をしてみたが、彼女たちも「それでも、今日退院してもらわなくては」という意見だった
医師に連絡して状況を説明した
医師は「酸素をつけて廊下を歩いて、Saturation(血中酸素飽和濃度)が下がらなければ退院」と指示をだした
さあ、行きましょう、とワタシ
おばあちゃん、娘さん、歩行器、酸素ボンベの大移動がはじまった
廊下の端まで行って、おばあちゃんが椅子に座った
180ft(54Mくらい)も歩いちゃった
案の定、Saturationは88に下がったし、血圧も低くなった
でも、5分で回復したので、やっぱり結果は「今日退院」
娘さんは、もちろん納得のいかない様子で、また「事情」を私に繰り返した
う~ん、聞くしかない
そして、15分が過ぎた

それから、お昼ごはんの食事を持っていくと
娘さんが一変して「今日、つれて帰ります」と言い出した
退院を一日延ばしてもらうことは、思い直した、というのだ

きっと、誰かに話を聞いてもらってすっきりしたんだと思う
普段は、介護に追われて誰ともゆっくり話をすることもなく、ひとり孤独になっていたのかも
すっきりしたら、88歳の痴呆の母親と、脳梗塞になったご主人の面倒を見る元気がでてきたのかも知れない
「傾聴」をあなどってはいけない、と思い直した出来事でした

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人工呼吸器をつける前に

68歳のアフリカ系アメリカ人の男性

急性腎不全の診断

HIVとAIDSの治療も受けている

申し送りの時点で呼吸の状態が思わしくなかった

昨夜至急で胸のレントゲンも撮っている

混乱して薬剤も使ったらしい

部屋に行ってみると、声をかけてやっと開眼する程度

ぱっとみ、とても68歳とは思えないくらい歳をとって見える

水を飲む力もなかった

Coarse Lung sound、Satulation1も88%しかなかった

すぐにRT (Respiratory Therapist)に連絡をして、ネブライザーをかけてもらう

酸素の量を上げる

マスクを付け替える

血圧も80と90を行ったりきたり

医師は何度も家族に連絡するが、連絡がつかない

昼ごろから、意識が混濁し呼吸数が16回以下になった

Code StatusをみるとFull Code

これでは、心肺停止になったときこのやせた老人ののどに挿管チューブをとおし、あばら骨の上か

心臓マッサージをしなければならなくなる

想像しただけで痛々しい

長いことエイズをわずらって

今回は、腎不全

そして、呼吸不全も起こしかけている

多分、心不全もあるだろう

それでも延命を望むのだろうか

本人にしか分からない

本人が決められないなら、家族しか決められない

その家族と連絡が取れない

今の段階では、Full Code

インターンの医師を呼んだ

RTは、呼吸停止になれば自分が挿管し呼吸器管理をすることになるものだから、はじめから乗り気ではなくしぶしぶやってきた

ナースのワタシは、いつCode Blueになってもいいように部屋を片付けクラッシュカートのスペースを作る

至急レントゲンの連絡をする

何度も血圧を測るたびに、マンシェッとがおじいさんの腕を締め付ける

12誘導のEKGをとる

インターンは「アテンディングの医師(インターンやレジデントの医師を指導する医師)を呼んで!」と強い口調で言った

インターン一人で手に負えるわけがない

病院にはRRT(Rapid Response Team)という、Code Blueになるまえに急変に対応するチームがある

麻酔科医ひとりとICUナース二人、RT1名

最低挿管、心マ、除細動、薬剤を使用しながらICUまで搬送することができる

RRTを呼びましょう、とインターンに言ったが「アテンディングを!」と言われた

アテンディングのポケベルを鳴らすと、4月5日まで不在のメッセージが

そこでインターンは、Medical Advisorというアテンディング不在でも、代わって意思決定の出来る医師を呼んだ

Medical Advisorの電話がやっと息子さんにつながった

状態の悪いこと、いつ心肺停止が起きてもおかしくないことが告げられている

それでも、Full Codeのままでいますか?

延命治療を望みますか?

と静かに問いかけている

電話の向こうは「自分だけでは決められない」と言ったのだろう

Medical Advisorは

自分だけでは決められない、というのはよく分かりますが、今、決められるのはあなただけです

そして、延命治療を開始しなければならない時はすぐにくるでしょう

今、あなたが決めるしかないのです

と、静かにそして強い口調で話した

すると、Medical Advisorは「患者さんの持ち物の中に、鍵はある?」と電話をすこし離して聞いた

多分、息子さんはお父さんの住む家の鍵を自分が開けることになるだろう、と覚悟したのだろう

レジデントの医師と私が、荷物のズボンのポケットなどをさぐる

「ありました」とレジデント

電話の向こうはCode StatusをDNR(Do Not Resuscitate) に切り替えたのだろう

Medical Advisorが

では、DNRに変更し、あなたが同意しましたということを記録に残します

そして、お父さんは無理な延命は行わず治療を続ける、ということになります

と確認をとった

電話を切って

Do not resuscitate, no exception.

とMedical Adivisor

周囲もDNR without exception.と繰り返し確認した

Medical Advisorは私に向かって「集中治療室には送りません」と方針を述べた

Understood

no exceptionというからには、exception(例外)もある

たとえば、挿管はするけれど心マはしない、とか

薬剤は使うけれど、挿管はしない、などの選択も可能だ

DNRになった患者さんの元からは、医師もRTも去っていく

もう、急変に備える必要がないからだ

これ以上、彼らに出来ることはない

波が引くように、人がいなくなる

それでも、ナースは患者のそばに残る

Full CodeでもDNRでも、看護は続く

最期の時が来るまで安楽でいられるように

シーツをととのえ、そぉっと体のむきをかえ(じょく創ができないように、呼吸が止まってしまわないように)、そして体温を維持するために温かい毛布をかける

もう、腕を締め付ける血圧計はいらない

静かに腕からはずす

部屋を元通り整える

手伝ってくれた助手さんが患者さんに声をかけた

Are you OK, Mr. Smith (仮名)?

一刻も早く、息子さんが到着してくれればいい、と心から願った

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親の死に目

「親の死に目に会う」のは、日本では大事なこと

息を引き取る間際に、そばにいてあげたい

一人で寂しく、逝って欲しくない

みんなが見守る中で安心して旅立って欲しい

当たり前のようにみんながもっている価値観

アメリカ人って、どうなんだろう?

アメリカに住む、他の人種はどうなんだろう??

メキシコ人、中国人、ロシア人・・・

みんな「親の死に目」には会わなくちゃいけないと思っているだろうか

いろんな人種、いろんな文化的背景をもつ患者さんがいる

輸血はぜったいダメな人

女医さんや女性の医療従事者しか受け付けない人(ご主人が部屋にいれば別ですが)

宗教的に食べてはいけないものがある人(豚肉とか)

「親の死に目」も確かめておけばよかった、と思うことがあった

87歳の男性患者さん

呼吸器不全でICUで6回も挿管と抜管を繰り返した

そして、先日うちのMed/Surg病棟に来た

意識は朦朧としている 呼吸状態もよくない

回復の見込みもない、ということでDNR (Do Not Resuscitate: 心肺停止でも、蘇生をしなくて言いという同意) になった

小学校で3年生を教える息子さんは、毎日午後に父親の様子を見に来る

たった一人の子供だそうだ

父親が早く元気になってくれることを願っている

DNRにサインしても、家族の心境ってそういうもの

希望を、一筋の希望を求め続ける

いつか、目を開けて、ごはんを口にしてくれるんじゃないか!

胃に管を通して栄養を流すことや、抜けてしまった点滴の針を差し替えることもしなくていいです、と同意書にサインしても

When is my father going to eat?

How is he getting enough nutrition?

Why he cannot open his eyes?!

とたずねてくる

呼吸状態がますます悪くなり、経鼻カテーテルだけでは足りずNon Rebreather Maskというおおきな酸素マスクに変える

それでも、血中酸素濃度は88%だ(本来92%は欲しいところ)

息子さんは、夕方家に帰っていった

それから、2,3時間して、ますます呼吸状態が悪くなった

努力呼吸 肺音は弱く泡沫音

DNRだから心電図モニターもついていない

医療従事者は、これ以上なにもすることがない

見守るだけだ

RT (呼吸器セラピスト)と、「これだといつ急に呼吸が止まってもおかしくないね」と話をしていた