死からの生還

結論から言っちゃうと
タイトルどおり
受け持ちの患者さんが一回死んで、生き返りました
まいった
弁置換術後5時間経った患者さんを11時に引き継いだのですが、申し送りで既に「ベースメーカーが上手く作動していない」だって
ペースメーカーは、心房と心室に釣り針のようなフックになった細い針で心筋にひっかけ、そこからワイヤーが体の外に出ているタイプ
この患者さんは、ペースメーカー無しでは心臓は停止状態
ペースメーカーがないと、心臓は動いていないんです
それが、ペースメーカーが上手く作動していない、だって?
まずいんじゃないか
詳しく準夜勤のナースに話を聞くと、DDDで100%ペーシングしていて時々ペーシングしなくなったので、DOOにしてある、と
まぁ、設定の詳しい話はともかく、ときど~きペーシングできなくて血圧が下がる、のだとか
当たり前だ
心臓が拍動しないのだもの
それで、体の外に貼り付けるパッド式のペースメーカーも病室内に用意してありました
もちろんパッドは既に体に張り付いている
あとは、機械につなげてダイヤルを"Pace"に回すだけ
準備OK
11時半に申し送りが終わり患者さんに声をかけたときには、うっすら反応がありました
両手を握ってくれました
患者さんはまだ呼吸器につながっています
0時近くになって、血圧を測っていた動脈ラインの波形がおかしくなり表示してある血圧が下がり、注意アラームが鳴りました
モニターを見ると、心拍はしっかりペーシングされている
それなら、動脈ラインの固定が悪いのかな~
時々ある、こういうこと
血圧が低いのでギョッとするが、実は波形が弱く血圧を低く読んでいるだけ
それで、あたくし動脈ラインの挿入部をいじくっていたんですね
この角度かなぁ~ もうちょっとかなぁ~
次の瞬間アラームがけたたましく鳴り、はっとモニターを見ると
心拍が 0 (ゼロ)
ドラマで見るあのまっすぐライン に チョボチョボとペースメーカーが刺激を送っている…
正直に言います
最初に頭に浮かんだのは、「モニター、壊れたか?」
患者さんは、呼吸器で規則正しく呼吸している
顔を見た・・・ら、真っ白
えっ、さっきまでピンク色だったのに
頚動脈、触れず
これがまた、首周りがワタシの大きな太ももくらいあるものだから、本当に触れていないのか動脈が深すぎて触れないのか、迷った
もう、顔で判断したって感じ(探しても触れない顔だな、これは・・・死人のお顔)
って、心臓は動いていない、つーことだな? なーーーーー!!
モニター、壊れていないよ
自分でもビックリでしたが、大声って出るもんです
同僚から、後で「怖い」と言われました
I NEED HEEEEEEEEELP!!
1回じゃないです、4回叫びました
それで、パッド式のペースメーカーのダイヤルをぐるりと回しました
カムバーック!
のに、ペーシングしない
この機械、どーなっているんだ?
ものは経験するもんです
このタイプの除細動機、気をつけてください
↑↑写真とはちょっと違います、12誘導が読めないタイプです・・・その写真が無くて変わりにコレを載せていますので、あしからず
除細動やCardioversionはパッドのみで心電図のリードをつけなくても機能します
た・だ・し
ペーシングの場合はパッドだけでは、ダメ
心電図のリードを向かって左の白いポートにつないでね
じゃないと、ペーシングしないからっ(こんな事態になるまで知らなかったなんて、情けないです)
リードを探して引き出しを開けたら、入っていなかった・・・トホホじゃ済まない
まったく、自分の優先順位の悪さに呆れました
バイタル、大事
点滴、大事
でも、一番大事なのは、心臓を動かしているペースメーカーの予備を万全にすることだった
今心臓を動かしているペースメーカーが作動しなくなったら、どうすんのサ
10秒と時間はないのだぞ
このパッド式のペースメーカー操作は諦め同僚に代わってもらい、その間にエピネフリンを1mg
この時には、既にCPRは始まって医師もちょうど到着
当直医の決断、早かったですね
多分10分と経たないうちに、その場で開胸することに
閉じた胸の傷を再び開ける準備にかかりました
エピネフリン、アトロピン、バイカーボネイト、カルシウム剤、そしてノルエピネフリンの点滴
その間、CPRが続きます
開胸する準備のため、患者さんの体はドレープ(布)をかけて滅菌エリアになるので、CPRも滅菌手袋をして行います
開けてビックリ
釣り針ペースメーカーが外れていたんだってサ
それじゃぁ、どんなに刺激の量を上げても、心臓は動かない
新しいワイヤーをつけてもらい、新しいペースメーカーにつながりました
ちょろりと患者さんの胸部をのぞくと、白っぽい色の心臓がビクンビクンと動いていました
そのまま患者さんは手術室に運ばれてゆきました~
ワタシ、こういうときダメダメなんです
エピネフリンなんか、手が震えてシリンジが割れ2本も無駄にしました(って、どーいう馬力だったのだろう)
みんな、後で"good job!"と励ましてくれましたが、合格点がつくとしたら助けを呼ぶ「叫び声」だけですね
手伝ってくれた先輩二人に聞いてみたら、日ごろからオープンチェスト(病室内での開胸用)のカートの引き出しのラベルを見て、何がどこに入っているかチェックしているのだそうです
オープンチェストって言われて、アタシが覚えていたのは一番上に乗っているトレイを開ければ「なんでも入っている」ってことくらい
でも実際には、温めた食塩水を入れるボウルとか、だいたい人肌に温めてある生理食塩水なんて病棟に準備していなかったです
吸引ももちろん必要だし(胸腔内を吸引する)
なんか、メスも入っていなかったらしい
心理的にも今日の私はけっこう弱気で、CPRをしながら
「心臓の手術をして、助かりませんでした」っていうのは無くも無い話しだしなぁ、とか
そんなことになったら、Code Blue委員会に呼びつけられるんだろうか、とか
ご家族に誰がなんと説明するのだろう、とか
いつもなら「ゼッタイ助ける!」と念を送るのに、今日は引け腰
患者さん、ごめんなさい
でも、どーいう運命なのか、そーいう時はかえってなんとかなるのがワタシの人生
とりあえず、結果オーライ
オープンチェストになるとき、患者さんはいずれ手術室に連れてゆかれるので、オペ室の当直チームに連絡します
外科医二人、麻酔科医、ポンプを管理する技師さん二人、看護師二人
この連絡が早かったのも、患者さんが生還できた理由です
当直医も、医師がもう一人居れば安心してすばやく開胸できます
すぐにチームに連絡してくれた管理師長に感謝です(使えるじゃ~ん)
麻酔科医に怒られちゃったのよね、ちょっと
ライン類がぐちゃぐちゃだったから
頸部のラインは二股になっており、PAライン類も同じようなところにごたごた
言い訳をすれば、薬のボトルから首の付け根までたどってはおいたものの、引き継いですぐだったので整理しているヒマはなく…
麻酔科医が昇圧剤を投与したい時に、「これは、どこにつながっているんだ!」って怒鳴られた
逆から(首の付け根)からたどると一目瞭然、それは頸部につながっております
麻酔科医は、抹消の腕につながっているのじゃないか、と心配していたのでしょう
抹消に注射したって、意味がないから
「ホントだな?ホントだな!!コレは昇圧剤なんだぞ、注射するぞ、すれば分かるんだからな!」とまで言われましたヨ、ったく
麻酔科医も必死だったのねぇ
ぐちゃぐちゃながら、確信もあったのです
引き継いですぐ、使っていない抹消のラインはロックして腕に固定しておいたので、腕には何もつながっていないのは確かでした
やっぱり、のんびりかまえていないで仕事はさっさとするもんです
1時間半後、患者さんが再び手術室から帰室
ノルエピネフリンの点滴とペーシング
それでなんとか朝まで乗り切りました
ちょっと体をきれいにしようと拭いただけ、レントゲン用の板を体の下に押し込んだだけで血圧が下がったんです
それで、体位交換どころの騒ぎじゃなく、命を助けるためならじょく創予防は二の次
朝にそのまま引き継ぎましたが、午後くらいには落ち着いてくれるのでしょうか
もちろん日勤は経験20年のベテランナースが受け持ちになりました
日勤さん、がんばって




















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