セラピストとナース
最近、「ハマった」患者さんがいる(笑
受け持ちたくてしょうがないっ
もともと、日本にいたときから、あの「プライマリー」っていうのがどうも苦手で、勤務のたびに同じ患者さんを必ず受け持つなんて考えられなかった
でも、このハマった患者さんは、なぜか別
今日も、受け持ちたい
73歳で、大動脈弁置換と大動脈弓部の修復術をしたおじいちゃん
手術は4月22日だったから、もう1ヶ月以上も前
それから、タンポナーデを2回も起こし、覚醒したあとは混乱
抜管してもすぐ呼吸困難になって、結局トラキオストミー(気管切開)をしたのが5月16日
今は、がんばってリハビリ中
トラキオになっても、なんとか呼吸器からの離脱をはからないと、一般病棟には移れないし家にも帰れない
病院にいることも分かっていない(そうだ)
手術した、っていうことも忘れちゃった(のだそうだ)
でも、家族のことは覚えている(これは、すごい)
時々、大暴れしてベッドから降りようとするので、Haloperidolを使ったり拘束しなくちゃならなかったりもする(だれも、したくはないが)
最近は、毎日呼吸器からの離脱と、リハビリと、食事の量を増やすことが目標(なにしろ、自分で経管栄養の管を抜いちゃったので)
こんな状態だから、トラキオのせいで「声が出せない」なんて理解できない
話しかけると、パクパクと口を動かして答えている
ものすごい難聴なので、病院の補聴器(まるで、i-podでも聞いているみたいに四角いマイクにイヤホンを付けるもの)を使って大きな声で話しかけても「少し」しか聞こえない、というジェスチャーをする
いちいち、マイクの部分を口元に持っていって話しかける
「のどについている管、触らないでくださいね!呼吸のための管ですからっ!!」
ある日、ながーい手をにゅうっと伸ばしてきてそのマイクをつかむと、そのマイクに向かって「#X$*+・・・」と話し始めた
もちろん、声が出るわけがない
自分の声が相手に聞こえていないようなので、そのマイクを使ったら声が大きくなってアタシにも聞こえると思ったんだろうか
でも
そのマイクについているイヤホン、自分の耳につながっているんですけど・・・
自分に向かってしゃべって、どうする?
やることが、いちいち、おかしい
トラキオのカフの状態が悪く、出るはずの声が出なかったときには
"Hey, can I have a coffee? black, black, no milk!" (コーヒー、ブラックでもらえる?ミルクなしだよ!)
声が出るようになって、最初の願いが「コーヒー」か・・・しかも、ゼッタイ「ブラックで」
もちろん、誤飲しないようにliquid thicknerという液体にとろみをつける粉をたくさん入れてあげた
それでも、とろとろコーヒーにはおかまいなしに、2杯も飲んだし
ジタバタしだしたので、部屋に飾ってあるお孫さんの写真を見せた
じーーーーーっと見て、うんうん、とうなづいた(お孫さんってわかっているのかも)
次に、奥さんからのカードを見せてみた
先週結婚記念日だったので、ハートがいっぱいついたラブラブメッセージのカードと、これまたハートがいっぱいぶら下がった風船が飾ってある
すると、カードを手に持ってしばらく見ている
見ている、というより「読んでいる」みたいだった
そして、私に返してきた
風船を見せた
風船は、じーっとは見なかった
やっぱり、カードを「読んで」いたんだ!
次に、家族からの寄せ書きを見せた
今度は、それを手に持って、やっぱり「読んで」いる!!
すごい!文字を読んで理解している
そこで、病棟の休憩室にあった新聞を手渡した
すると、足を組んで新聞を両手で大きく広げ、新聞を読み出した
まるで自宅のリビングのソファーに寄りかかり、リラックスしているみたい
もう、tisaneは一人で興奮して、周りのナースやチャージナースに「見て!見て!!新聞、読むのよ!!」と大騒ぎ
だって、これまで「混乱して大暴れして拘束されている呼吸器の付いた老人」だったのに
新聞読むなんて、ぜんぜん別人じゃないですか~
歯ブラシを手渡したら、不器用だけれど自分で磨いた
ゼリーを食べるときにスプーンを渡したら、ゼリーのカップも自分で持つ、貸せぇ、とばかりにまた長い腕をにゅぅっと延ばしてきた(まっすぐは持てないので、もちろんガウンがゼリーだらけになるんだけれど)
いろんなことが少しずつ、自分で出来るようになっていく
そうしたら、家に帰れる!
自分の心臓の手術のことは忘れても、決して忘れなかった家族の待つ家
tisaneが「新聞」や「歯ブラシ」や「ゼリー」でいちいち大騒ぎしていたとき、やっぱり周りのナースたちもすごく喜んでいた
通りかかった外科医も「えっ、新聞?」と驚いていた
でも、ひとり無反応のナースがいるんデス
彼女は、一年前まで呼吸器セラピストだった人
呼吸器セラピストをやめて看護の勉強をして、ナースになった
だから、呼吸器のトラブルなんかは、ちょいちょいっと解決してくれる
でも、こういうリハ系は、苦手なんだろうか
「興味なし」といった反応だし、もちろん受け持ちにもなりたがらない
病棟に一人、全く無反応の患者さんがいるけれど、他のナースはそれでも「聴覚は最後まで残る」ことを信じて、一生懸命話しかけながらケアをする
でも、元呼吸器セラピストの彼女は、無言でケアをしている
全てが「ケア」じゃなくて「タスク」なんだろうな
薬をあげる
経管栄養をつなぐ
吸引をする
採血をする
体を拭く・・・
看護の仕事が、どんどん他の専門職と共有されていく
今は、そうじゃなくちゃ医療が成り立たない
栄養のことは、栄養士に
リハビリのことは理学療法士に
お金や家族のことは、ソーシャルワーカーに
心理的ケアは、心理療法士に
そして、呼吸のことは呼吸器セラピストに
薬のことは、薬剤師に
じゃあ、看護師ってなんだろう?って思うこともある
でも、彼女の反応(無反応)を見て、やっぱり看護師が患者さんのそばにいて一番の理解者、代弁者じゃなくっちゃいけないんだ、と気づかされました
ウフフ・・・今日も、おじいちゃんの受け持ちになれるといいなぁ(今日は、大暴れしないでネ・・・)
「看護の仕事」カテゴリの記事
- 働くのは、ピザのため(2008.08.06)
- セラピストとナース(2008.06.03)
- シェッツマン氏(2005.05.20)
- you made my day easier(2005.06.07)
- ひとの生きる力(2005.06.13)
TrackBack
TrackBack URL for this entry:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/108681/41411221
Listed below are links to weblogs that reference セラピストとナース:











Comments
楽しいお話ありがとうございました!私はもっとオペナースを極めたくてアメリカでのナースを目指しています。オペナースは他のunitとは違って手術の進行とか、術者の手の動きをみて次を予測したりするので、どちらかと言うと医者寄りな気がします。「だったらassistant physicianになったら?」って言う人も要るけど、私はずっとナースでい続けたいと思っています。ナースにしか出来ないこと、気づけないことってやっぱりあるし、ナースじゃないと出来ないと思います。tisaneさんのunitで言えば、ナースって・・・「患者さんのそばで見守る第二の家族」って言う感じでしょうか??
Posted by: stitch | 06/02/2008 at 01:52 PM
☆stitchさん
「第二の家族」かぁ~ いいですね!
こんなふうに自分の仕事をとらえたことはなかったデス
でも、あの緊迫したオペ室でオペが進行していくとき、誰が一番患者さんに近い立場で判断するか、となったら、ナースしかいないですよね
麻酔看護師というのも、そこから生まれた職業なのかも…
コメント、ありがとうございました
Posted by: tisane | 06/07/2008 at 08:29 AM