「けいちょう」って、看護特有の言葉、と聞いたことがある
そうなのかな
相手の話によく耳を傾けて話を聞くこと
聞きもらすまいとして熱心に聞くこと。Shin Meikai Kokugo Dictionary, 5th edition (C) Sanseido Co., Ltd. 1972,1974,1981,1989,1997
listen attentively
日本では、学生のころよく教えられました
アメリカでは…critical thinkingの陰に隠れて、あまり強調されていないような印象
忙しさにまぎれて、つい忘れてしまう「話をよく聞く」行為
受け持った88歳の痴呆のあるおばあちゃん
家に帰って面倒をみるのは、娘さんだけ
娘さんは毎日病院に来て、お母さんがちゃんとご飯を食べるか、お手洗いに行けるか、付き添っていた
でも、毎日医師に「退院は延ばしてほしい」とお願いしている
アメリカの病院ではもう入院させてもらえないくらい、88歳のおばあちゃんは回復している
(と言っても、酸素をつけて歩行器を使って、トイレに行くくらいの距離は歩けるようになった…というのが、退院の目安ですが)
酸素は家に届いたし、歩行器もある
だから、退院してください
というのだ
娘さんの話によると、トイレは2階
おばあちゃんがすごすリビングルームは1階
階段が25段もある
カモード(ポータブルトイレ)をおけばいいじゃない、というdischarge planner
確かに、そう
でも、お風呂はどうするの?
お散歩するにも、外から玄関までは15段の階段がある
娘さんは、せめてお母さんの体力がもう少し回復して、手がかからなくなるまで見てほしい
と思っているのだ
一日でも早くベッドを空けたい医師 VS 退院を延ばす家族
すっかりこんな構図ができてしまった
そんなときに受け持ちになった、ワタシ
まあ、本来なら「一日でも早くベッドを空けたい医師」側について娘さんを説得するんだろうけど、なんかそんな気にもなれなかった
そしたら、強気の娘さんがガンガンしゃべりだした
どうしてももう一日、おかあさんを見ていてほしい、云々
理由を聞くと
ご主人が、おとといの夜脳梗塞で倒れた
症状は軽かったから昨日家に帰ってきたけど、お母さんの部屋を整えるのにもう一日欲しい
というものだ
20分くらい話を聞いた
ちと、長かった…が耐えて聞いた
「事情(ご主人のこと)」もあるし、ソーシャルワーカーやDischarge Plannerに話をしてみたが、彼女たちも「それでも、今日退院してもらわなくては」という意見だった
医師に連絡して状況を説明した
医師は「酸素をつけて廊下を歩いて、Saturation(血中酸素飽和濃度)が下がらなければ退院」と指示をだした
さあ、行きましょう、とワタシ
おばあちゃん、娘さん、歩行器、酸素ボンベの大移動がはじまった
廊下の端まで行って、おばあちゃんが椅子に座った
180ft(54Mくらい)も歩いちゃった
案の定、Saturationは88に下がったし、血圧も低くなった
でも、5分で回復したので、やっぱり結果は「今日退院」
娘さんは、もちろん納得のいかない様子で、また「事情」を私に繰り返した
う~ん、聞くしかない
そして、15分が過ぎた
それから、お昼ごはんの食事を持っていくと
娘さんが一変して「今日、つれて帰ります」と言い出した
退院を一日延ばしてもらうことは、思い直した、というのだ
きっと、誰かに話を聞いてもらってすっきりしたんだと思う
普段は、介護に追われて誰ともゆっくり話をすることもなく、ひとり孤独になっていたのかも
すっきりしたら、88歳の痴呆の母親と、脳梗塞になったご主人の面倒を見る元気がでてきたのかも知れない
「傾聴」をあなどってはいけない、と思い直した出来事でした
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